筆者には、「BtoBマーケティングの活動は、結局のところABM(Account Based Marketing)に行き着く」という強い思いがあります。
本コラムでは、米国におけるABMの潮流を踏まえながら、今後日本でもABMが本格的に広がっていくであろう背景と、なぜ今ABMに取り組むべきなのかについて、5つの理由から整理します。
どのようなビジネスモデルにおいても、その根幹にあるのは
「顧客の成功」
「顧客が成し遂げようとしている目的を実現すること」
です。
近年ではカスタマーサクセスという言葉で語られることが多いですが、ABMの広義の意味も、まさにここにあります。
ABMはまず、
ICP(Ideal Customer Profile=理想的な顧客像)を定義すること
から始まります。
自社にとって理想的な顧客とは誰なのか。
その顧客が目指すゴールを理解し、中長期にわたって伴走することが、結果としてLTV(Life Time Value)の最大化につながります。
このICPの考え方は、既存顧客だけでなく、これから関係を築く新規顧客のターゲティングにおいても重要な軸となります。
「顧客の成功」を前提にしつつ、企業は限られた
予算・リソース・サービス
の中でROIを最大化しなければなりません。
広告、イベント、名刺獲得、架電、メール――
これらの活動を無計画に行うのではなく、ICPに対して最適化された形で実行することが求められます。
多くの企業は、すでに企業分析やSTP(Segmentation / Targeting / Positioning)に基づくマーケティングを行っているはずです。
実はそれらはすでに**ABM的な要素(One of ABM)**を含んでいます。
ここまで読むと、
「それなら、すでにABMはやっている」
と感じるかもしれません。
しかし重要なのは、
「ABMの一部をやっていること」と「ABMに取り組んでいること」は全く別だ
という点です。
多くの企業では、全社的なABM戦略が存在せず、
現場レベルで断片的な施策だけが進んでいるケースが少なくありません。
その結果、
中長期視点でのICPの見直しが行われない
部門ごとに部分最適な活動が進む
マーケ、営業、サービスが自転車操業になる
といった状態に陥りがちです。
米国では、MAブームの最中であった2015年、Marketo創設者の一人がABM特化型ツールを提供するEngagio社を立ち上げました。
その背景には、BtoBにおけるリード単位戦略の限界がありました。
「One of ABM」ではなく、
ABM Strategyとしてビジネス戦略に組み込む必要がある
という気付きです。
米国では、ABMはすでに一過性のトレンドではなく、
BtoBマーケティングの中核戦略として定着しつつあります。
ITSMAの調査によると、ABMに取り組む企業は年々増加しており、
その成果も数値として示されています。
“84% of marketing organizations have had higher ROI with ABM than traditional tactics.” – ITSMA
ABMは、ターゲットを明確にすることで投資の無駄を減らし、ROIを高める戦略です。
経営層がABMに関心を示す最大の理由も、ここにあります。
BtoBの購買には、平均して5人以上、企業規模によっては7人以上が関与します(Gartner)。
一人の問い合わせ担当者だけを追っても、企業全体の動きは見えません。
個人ではなく、企業単位で関係性を捉えることが、機会損失を防ぎます。
勘や属人的な判断に依存したビジネスは、人口減少や市場変化の中で限界を迎えます。
ABMは、
必要なデータを定義し
取得・蓄積・活用・メンテナンスまで設計する
データマネジメントを前提とした戦略です。
不正確なデータは、戦略判断そのものを誤らせます。
ABMは、論理的な経営・マーケティングへの転換を促します。
ABMは、マーケや営業だけの取り組みではありません。
情報システム、製品、CSなど、会社全体で取り組む必要があります。
顧客は「担当者」ではなく、会社全体を見ているからです。
ICPを軸に、組織・意識・仕組みを揃えることが不可欠です。
ABMは、短期の売上ではなく、
将来の売上を生み続ける関係性を築く活動です。
目先の売上は営業が作れますが、
将来の売上を作るのはABMの積み重ねです。
ABMはゴールではありません。
AI時代へ進むための“土台づくり”のフェーズです。
以下は、ABMを将来のAI活用につなげるために、
今の段階で確認しておきたいチェックリストです。
企業を一意に識別できるID(法人番号等)を持っているか
アカウントと個人の関係性が構造化されているか
行動データをアカウント単位で集約できているか
データ項目が「使い道」から定義されているか
データの入口で正規化されているか
データ劣化を前提にした定期メンテナンスがあるか
部門横断でデータを統合・参照できているか
スコアリングや判断ロジックを説明できるか
法規制・同意管理を前提に設計されているか
AIに何を学ばせたいかを言語化できているか
すべての道はABMに通ず。
しかしABMの本当の価値は、その先にあります。
ABMを通じて整えたデータと組織は、
AI時代における最大の競争力になります。
ABMに取り組む「いま」こそが、
5年後・10年後の差を決める分岐点なのです。
株式会社B-Story
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