データクレンジングの必要性と対策|Bad LeadがROIを蝕む前にやるべきこと

作成者: Akihiko Sunakawa|Jan 12, 2026 9:25:05 AM

はじめに

名寄せやデータクレンジングに苦しむB2B企業は少なくありません。
本コラムでは、海外の調査・レポートも踏まえながら、なぜデータクレンジングが必要なのか、そして今すぐ取り組める現実的な対策を当社の見解として整理します。

本題に入る前に、ひとつ質問です。
マーケターの皆さまは「リードの健康状態」を把握できていますでしょうか?

「そもそもリードの質の定義ができていないので、健康状態が分からない」
——この状態の企業も多いはずです。

しかし、リード品質を把握できないまま活動を続けると、

  • セグメント/ターゲティングが曖昧になる

  • レポートの信頼性が下がる

  • 営業に渡しても動いてくれない

  • ROIが悪化する

といった問題が連鎖的に起こります。

リードの質は、業種・部門・用途(分析、営業活動、施策評価など)によって定義が異なります。
だからこそ、まずは「目的に応じたGood/Bad Lead定義」と「現状の分布(どれだけ存在し、どこから来るか)」が必要になります。

早い段階で対策を打て(1-10-100ルール)

品質管理の世界には「1-10-100ルール」があります。
設計時に直せばコストは小さいが、工程が進むほど修正コストは指数関数的に上がる、という考え方です。

SiriusDecisionsは需要創出の文脈で、入力時の検証=低コスト/後工程のクレンジング=中コスト/放置=高コストという趣旨を述べています(The Impact of Bad Data on Demand Creation)。

重要なのは、ここで言うコストが単なる作業費ではない点です。
B2Bの現場では「データの遅れ=顧客への初動の遅れ」につながり、結果として機会損失が発生します。
この損失は、マーケティング予算のROIを確実に押し下げます。

なぜデータクレンジングが必要なのか

1) 入口が複数あるほど、品質は崩れる

例えばイベント集客ひとつ取っても、

  • 外部メディア経由のリード

  • 自社フォーム経由のリード

  • 会場スキャンで取得したリード

と入口が増えるほど、項目・形式・粒度は揃いません。
入口整備がないままデータを流し込むと、名寄せ・形式変換・重複排除・手直しが発生し、施策のスピードを落とします

2) 海外でも「データ品質」が最重要テーマになっている

Informaticaのレポート(2017)では、マーケティング意思決定者の多数が「マーケティングデータ品質の改善」を成功要件として挙げています。

さらに、Integrate等のレポートでは、MA/CRMデータ品質への信頼度が高い組織の方が、売上目標達成・マーケ施策評価の有効性において高い割合を示す旨が報告されています。

結論として、データ品質は「整えると気持ちが良い」類の話ではなく、成果(売上・評価・効率)に直結する経営テーマです。

ビジネスを圧迫するBad Lead

SiriusDecisionsは、B2Bデータベースに一定割合の重大な誤りが含まれ得るという趣旨を述べています。
Integrateは、非統制なDBに流入するリードのうち品質基準を満たさないものが大きな割合を占める可能性を示しています(The Cost of Bad Leads)。

また、Justin Gray(LeadMD)による「データは手当てしなければ年次で劣化する」という指摘も、現場感として非常に示唆的です。
MAの多くは登録件数で課金されるため、Bad Leadが増えるほど**ツールコストそのものが“ムダ化”**しやすくなります。

Bad Leadとは何か(5つの代表類型)

Bad Leadの定義は企業ごとに最適化すべきですが、一般に問題になりやすい類型は次の5つです。

  1. 不完全(Incomplete):必要項目が欠けていて活用できない

  2. 不正確(Invalid):誤記・無効データ(連絡不能など)

  3. 重複(Duplicates):同一人物/同一企業が複数レコードで存在

  4. 正規化不備(Normalization):表記揺れや形式不統一で分析・連携に使えない

  5. 非準拠(Non-compliant):法規制・同意要件を満たさない(例:GDPRは2018年施行)

特にB2Bでは「企業名/部署名/役職/メールドメイン/住所」などの揺れが複合し、名寄せコストと誤判定リスクを増幅させます。

対策(やるべき順番がある)

データ品質対策は、「気合でクレンジング」ではなく、プロセスとして設計することが重要です。

1) 現状把握(品質を測れる状態を作る)

  • 業務要件からゴール(データ活用のあるべき姿)を定義

  • Good Lead/Bad Leadの定義(目的別)

  • データIN(入口)とOUT(連携先)のフォーマット整理

  • プロセス別に取得すべきデータ項目を整理

  • ツールごとのデータ整備ルール化(MA/CRM/SFA 等)

2) 入口対策(最も費用対効果が高い)

自由入力は「揺らぎ」「不備」「誤記」を必ず生みます。
そして、後から完全に直すのは難しい。いわゆるガーベージ・イン/ガーベージ・アウトです。

したがって最優先は、データの入口で“正しい形”を取る仕組みです。

  • 会社名の検索・選択

  • 住所・法人属性の自動補完

  • 入力ルールの統一(表記・形式)

これだけで、後工程のクレンジング工数と機会損失を大幅に抑制できます。

3) 定期クレンジング(劣化を前提に運用する)

入口を整えても、データは劣化します。
異動、退職、社名変更、部門改編、メール変更、統廃合。B2Bでは避けられません。

したがって、データは「一度整えたら終わり」ではなく、
定期クレンジング+重複排除+必要に応じたリッチ化を運用に組み込みます。

おわりに

データクレンジングは、守りの作業に見えます。
しかし実態は、マーケティングのスピードとROIを守るための「攻めの基盤」です。

  • Bad Leadを増やさない(入口統制)

  • Bad Leadを溜めない(定期整備)

  • 品質を測れる(定義と指標)

この3点が揃うと、セグメント、施策評価、営業連携が一気に前に進みます。
本コラムが、日々の活動に追われる中でも「早期に手を打つべき論点」を見失わず、行動に移すきっかけになれば幸いです。

REFERENCES

  • SiriusDecisions, “The Impact of Bad Data on Demand Creation”

  • Informatica, “Leadership Benchmark Report on Marketing Data Quality Trends, 2017.”

  • Bizible, Heinz, Uberflip, Radius, LinkedIn; “State of Pipeline Marketing Report, 2017.”

  • Integrate, “The Cost of Bad Leads”

  • Justin Gray, CEO of LeadMD

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